はじめに
「AWSを使って自分のウェブサイトを作ってみたい」と考える初心者の方へ、今回はわかりやすくステップバイステップでその方法を紹介します。AWS(Amazon Web Services)は、インターネット上で安全でスケーラブルなインフラを提供しており、個人から企業まで幅広く利用されています。ですが、初めてAWSに触れると、用語や設定が少し複雑に感じるかもしれません。この記事では、できるだけシンプルな言葉で説明し、初心者でも迷わず進められるようにしています。
AWSとは?
AWSは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称です。クラウドコンピューティングとは、物理的なサーバーやデータセンターを持たずに、インターネット経由で仮想のサーバーやストレージを使える技術です。これにより、柔軟かつ効率的にウェブサイトやアプリケーションを運用できるようになります。
AWSは多数のサービスを提供していますが、今回は「ウェブサイト制作」に必要な基本的なサービスだけに絞って解説していきます。AWSを使うと、個人でも本格的なウェブサイトを簡単に作成・公開できるのが魅力です。
AWSでサイトを作るために必要な準備
1. AWSアカウントの作成
AWSを利用するために最初に必要なのが「AWSアカウント」です。以下の手順で簡単にアカウントを作成できます。
アカウント作成手順
- AWS公式サイトにアクセスします。
- 「サインアップ」をクリックし、必要な情報(名前やメールアドレス)を入力してアカウントを作成します。
- 支払い方法(クレジットカードなど)を登録しますが、AWSには無料枠があるため、軽い利用であれば初期費用が発生することはありません。
- アカウントが作成されたら、AWSコンソールにログインします。
2. ドメイン名の取得
ウェブサイトにアクセスするための「住所」となるのがドメイン名です。たとえば、「mywebsite.com」のような名前をドメインと呼びます。ドメインは外部のサービスで取得するか、AWSの「Route 53」というサービスを使って取得することも可能です。取得済みのドメインをAWSに連携させることもできます。
AWSを使ったウェブサイト制作の手順
ここからは、AWSを使って具体的にウェブサイトを制作・公開する手順を見ていきます。静的なサイトを公開する場合、以下の方法が最もシンプルです。
1. S3バケットの作成と設定
AWSのS3(Simple Storage Service)は、ファイルの保存場所を提供してくれるサービスです。これを使って、HTMLや画像、CSSなどのウェブサイトのファイルをアップロードし、インターネット上に公開することができます。
S3バケットの作成方法
- AWSコンソールの検索バーで「S3」と入力し、S3の管理画面に移動します。
- 「バケットを作成する」ボタンをクリックします。
- バケット名を入力し、リージョン(地理的な場所)を選択します。このバケット名は一意である必要があり、世界中で同じ名前は使えません。
- バケットを作成したら、バケット内にファイルをアップロードします。
2. バケットの静的ウェブホスティングの有効化
S3にアップロードしたファイルをインターネット上で閲覧可能にするには、「静的ウェブホスティング」の機能を有効にします。
静的ウェブホスティングの設定手順
- S3バケットの設定画面に移動し、「プロパティ」タブをクリックします。
- 「静的ウェブホスティング」を選択し、有効にします。
- 「インデックスドキュメント」には
index.html
と入力し、エラードキュメントにはerror.html
(もし用意していれば)を設定します。 - これで、バケットがウェブサイトとして機能するようになります。
3. ファイルのアップロード
次に、ホームページで使用するHTML、CSS、画像などのファイルをS3バケットにアップロードします。
ファイルアップロードの手順
- S3バケット内で「オブジェクトをアップロードする」をクリックします。
- 作成済みのウェブサイトファイルを選択し、アップロードします。
- アップロード後、ファイルのパーミッション(アクセス権限)を公開に設定する必要があります。これを忘れると、一般のユーザーがファイルにアクセスできなくなります。
4. 公開用の設定
最後に、アップロードしたファイルが一般にアクセス可能になるように設定します。これには、S3バケットの「バケットポリシー」を編集し、すべてのユーザーに対してファイルを表示できるように設定します。
バケットポリシーの設定方法
- S3バケットの「アクセス許可」タブに移動します。
- 「バケットポリシー」を編集し、以下のような内容を追加します。
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Principal": "*",
"Action": "s3:GetObject",
"Resource": "arn:aws:s3:::バケット名/*"
}
]
}
これにより、誰でもインターネット経由でバケット内のファイルにアクセスできるようになります。
5. CloudFrontで高速化(オプション)
S3で公開したサイトは、そのまま利用できますが、「CloudFront」というサービスを使うと、世界中のユーザーにより高速でサイトを表示することができます。CloudFrontはCDN(コンテンツ配信ネットワーク)という仕組みを使い、近くのサーバーからコンテンツを配信します。
CloudFrontの設定手順
- AWSコンソールで「CloudFront」と検索し、新しいディストリビューションを作成します。
- オリジンとしてS3バケットを選択し、その他のオプションは基本的にデフォルトでOKです。
- ディストリビューションが作成されると、CloudFrontのURLが発行され、そのURLを使ってアクセスできます。
6. Route 53で独自ドメインを設定する
独自のドメインを使ってサイトにアクセスできるようにする場合は、AWSの「Route 53」というサービスを使って設定します。これにより、「example.com」のようなURLでサイトを公開することが可能です。
Route 53の設定方法
- AWSコンソールで「Route 53」を検索し、新しいホストゾーンを作成します。
- 登録したドメインに対してDNSレコードを設定し、S3バケットやCloudFrontと紐付けます。
- 設定が反映されるまでに数時間から1日程度かかることがあります。
よくある失敗とその対策
1. バケットの公開設定を忘れる
S3バケットを作成してファイルをアップロードしただけでは、ファイルはデフォルトでプライベートな状態です。そのため、バケットポリシーを設定し、一般公開にする手順を忘れがちです。この設定がなければ、ユーザーがサイトにアクセスできなくなってしまいます。
2. CloudFrontのキャッシュに注意
CloudFrontを使用する場合、キャッシュが残っていると、サイトの変更内容がすぐに反映されないことがあります。これを防ぐためには、キャッシュのクリアや設定変更が必要です。また、キャッシュの時間(TTL)を短くすることもできます。
3. コストの管理
AWSは「従量課金制」を採用しており、使った分だけコストがかかります。無料枠が用意されていますが、使いすぎるとコストが発生する可能性があるため、AWSの請求ダッシュボードを定期的に確認することをおすすめします。
AWSを使うメリットとデメリット
メリット
- スケーラビリティ: AWS
は、アクセスが急増しても自動でリソースを調整できるため、大規模なトラフィックに対応できます。
- グローバル展開: CloudFrontを使えば、世界中どこからでも高速にアクセスできるサイトを作ることができます。
- コスト効率: 初めて利用する方は、無料枠を活用することで、低コストでウェブサイトを運用できます。
デメリット
- 初期設定の難しさ: サービスが多機能な分、最初の設定に少し時間がかかることがあります。
- 従量課金制のリスク: 使い方によっては、予想以上にコストがかかることもあります。
まとめ
AWSを使ってウェブサイトを作るのは、最初は少しハードルが高く感じるかもしれませんが、基本的な設定を覚えてしまえば非常に便利です。S3やCloudFront、Route 53をうまく活用することで、スケーラブルで信頼性の高いウェブサイトを構築できます。今回紹介した手順を参考に、ぜひ自分のウェブサイトをAWSで立ち上げてみてください。