「よし、採用サイトが完成したぞ!」
「アクセス解析も設定したし、これから運用だ!」
採用サイトが無事に公開され、運用フェーズに入る時、多くの担当者がデータとにらめっこを始めます。しかし、数字だけを追っていては、本当に「選ばれる」採用サイトを作ることは難しいかもしれません。
「データは見てるけど、いまいち改善点が分からない…」
「改善施策を打っても、応募の質が上がらない…」
「結局、採用サイトって担当者だけで頑張るしかないの?」
そんな壁にぶつかっていませんか?
採用サイトは、単なる情報発信ツールではありません。それは、未来の仲間となるかもしれない候補者との「対話」の場であり、企業の「想い」を伝える舞台です。
事実、株式会社ディスコの「キャリタスリサーチ」による調査では、学生が企業研究で最も参考にする情報源として、企業の採用サイトが常に上位に挙げられており、その重要性は計り知れません。
成果を最大化するためには、データ分析に基づいた改善に加え、候補者の「感情」や「体験」に寄り添い、社内全体を巻き込んでいく視点が不可欠なのです。
この記事では、一般的な改善方法に加え、
- 採用サイト改善における「候補者体験(Candidate Experience)」の重要性
- 数値データだけでは見えない「課題」の見つけ方(定性的な声の拾い方)
- 候補者の「心」を動かす改善施策のヒント
- 採用担当者だけじゃない!「社内連携」で改善を加速させる方法
- 失敗から学び、進化し続けるためのマインドセット
といった、一歩踏み込んだ「運用・改善の極意」を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
この記事を読んで、あなたの採用サイトを、単に「見られる」サイトから、「共感を呼び、心を掴み、仲間が集まる」サイトへと進化させましょう。
ステップ1:公開したらまずやるべきこと – 効果測定の準備と「視点」の設定

サイト公開後の最初のステップは、効果測定の準備と目標設定です。これは基本ですが、ここで「どんな視点でサイトを見るか」を設定することが、後の改善の質を大きく左右します。
1. 効果測定ツールの設定(基本)
まずは基本となるツールを設定します。
- アクセス解析ツール(Google Analytics 4など): サイト訪問者の行動データを取得。
- (必要に応じて)ヒートマップツール: ユーザーの視覚的な動きを把握。
これらは、サイトのパフォーマンスを客観的に測る上で必須です。
2. 明確な目標(KPI)の設定(基本+α)
次に、具体的な目標を設定します。応募数やCVRといった定量的な目標に加え、「どんな候補者体験を提供したいか」という定性的な目標も意識しましょう。
【採用サイトの目標設定例(KPI) – 候補者体験視点を加えて】
目標カテゴリ | KPI(目標指標)の例 | 具体的な目標値の例 | 候補者体験の視点(定性目標) |
---|---|---|---|
サイトへの集客 | ・月間セッション数 ・新規ユーザー数 | ・月間セッション数 〇〇件 ・新規ユーザー数 〇〇人 | ・ターゲット層に「見つけてよかった」と思われる存在になる |
サイト内行動 | ・平均セッション時間 ・直帰率 ・特定ページの閲覧数(社員インタビュー、企業文化など) | ・平均セッション時間 〇分〇秒 ・直帰率 〇〇%以下 ・重要ページの閲覧数 〇〇%向上 | ・ストレスなく情報収集でき、企業理解が深まる ・働くイメージが具体的に湧き、ワクワクする |
応募(成果) | ・応募フォームへの到達数 ・応募完了数(CV数) ・応募完了率(CVR) | ・月間応募完了数 〇件 ・応募完了率 〇% | ・スムーズに応募でき、「応募してよかった」と思える ・応募前の不安が解消されている |
採用の質(長期的視点) | ・サイト経由応募者の書類選考通過率 ・サイト経由応募者の内定承諾率 ・入社後の定着率 | (具体的な数値目標を設定) | ・入社後のギャップが少なく、自社にマッチした人材が活躍している ・サイトで伝えた通りの「良い会社」だと感じてもらえている |
このように、数字の目標だけでなく、「候補者にどんな体験を提供したいか」という視点を持つことが、より本質的な改善につながります。
ステップ2:現状把握 – データ分析+「候補者の声」に耳を傾ける

目標を設定したら、現状把握です。アクセス解析データを見ることはもちろん重要ですが、それだけでは見えてこない「候補者の本音」を探ることが、オリジナリティのある改善の鍵となります。
1. アクセス解析データの基本的な見方
Google Analytics 4などで以下のレポートを確認し、定量的な傾向を掴みます。
- トラフィック獲得: どこから来ているか?
- ページとスクリーン: どのページが見られているか?
- イベント: どんな行動がされているか?
- ユーザー属性: どんな人が見ているか?
2. 数値化できない「声」を拾う方法
データだけでは分からない「なぜ?」を探るために、定性的な情報を積極的に集めましょう。
- 応募者・内定者アンケート/ヒアリング
- 「サイトのどこに魅力を感じましたか?」
- 「逆に分かりにくかった点、もっと知りたかった情報は?」
- 「他社の採用サイトと比較してどうでしたか?」
- 「応募を決意した一番の理由は何ですか?」
- 「サイトを見て、どんな気持ちになりましたか?(期待、不安、共感など)」
- 社員からのフィードバック
- 現場の面接官
「候補者からよく聞かれる質問は?」「面接で話すと驚かれる自社の魅力は?」 - 新入社員
「入社前に知りたかったこと」「サイトの情報と現実のギャップは?」 - 全社員
定期的なアンケートや雑談で、「自社の魅力」「改善点」をヒアリング。
- 現場の面接官
- SNSエゴサーチ
X(旧Twitter)などで自社名や採用に関するキーワードで検索し、候補者や世間の声(ポジティブ/ネガティブ両方)を収集する。 - 辞退者へのヒアリング(可能であれば、慎重に)
なぜ辞退に至ったのか、採用プロセスや情報提供に改善点はなかったか、正直な意見を聞く。(※関係性を壊さないよう配慮が必要)
これらの「生の声」は、データだけでは見えない課題や、思わぬ魅力、改善のヒントを教えてくれます。
3. 「候補者体験(Candidate Experience)」視点でのジャーニーマップ作成
なぜ候補者体験が重要なのでしょうか?
例えば、リクルート就職みらい研究所の「就職白書」などの調査では、選考プロセスにおける学生の体験(丁寧さ、スピード感、情報提供など)が、その企業への入社意欲やイメージに大きく影響することが示されています。採用サイトでの情報収集も、この候補者体験の重要な一部なのです。
候補者が自社を認知し、興味を持ち、応募し、選考を経て入社(あるいは不採用)に至るまでの一連の体験を「旅(ジャーニー)」として捉え、各接点での候補者の行動、思考、感情、そして課題を可視化します。
- フェーズ
認知 → 興味・関心 → 比較・検討 → 応募 → 選考 → 内定 → 入社 - タッチポイント
各フェーズで候補者が接触する可能性のあるもの(例:求人広告、SNS、採用サイト、説明会、面接、社員との面談など) - 候補者の行動・思考・感情
各タッチポイントで候補者が何をし、何を考え、どう感じるか(ポジティブ/ネガティブ)を想像する。 - 課題
各タッチポイントで候補者が感じる可能性のあるストレスや不満、情報の不足などを洗い出す。
このジャーニーマップを作成することで、採用サイトが候補者体験全体の中でどのような役割を担い、どの部分で貢献または阻害しているのかを客観的に把握できます。
ステップ3:課題発見 – データと「共感」で本質を見抜く

収集した定量データ(アクセス解析)と定性データ(候補者の声、ジャーニーマップ)を組み合わせることで、より本質的な課題が見えてきます。
【課題発見のヒント – データと共感を組み合わせて】
- データ: 特定ページの離脱率が高い
- 声/体験
「情報が専門的すぎて理解できなかった」「結局何が言いたいのか分からなかった」「次のアクションが分からず不安になった」 - 課題仮説
コンテンツの分かりやすさ、構成、導線に問題があるのでは?候補者の知識レベルと合っていないのでは?
- 声/体験
- データ: 応募完了率(CVR)が低い
- 声/体験
「入力項目が多すぎて面倒になった」「エラーが出て先に進めなかった」「個人情報を入力するのが不安だった」 - 課題仮説
応募フォームの使いやすさ(EFO)や、信頼性の担保に問題があるのでは?
- 声/体験
- データ: 想定ターゲットと異なる層からのアクセスが多い
- 声/体験
(ターゲット層から)「自分向けの求人だと思わなかった」「もっと具体的な情報が欲しかった」 - 課題仮説
サイト全体のメッセージやコンテンツが、ターゲット層に響いていないのでは?SEOキーワードが適切でない可能性も?
- 声/体験
重要なのは、データが示す「現象」の裏にある「候補者の気持ち」を想像することです。「なぜ離脱したのか?」「なぜ応募に至らなかったのか?」その背景にある感情や思考に寄り添うことで、表面的な改善に留まらない、本質的な解決策が見えてきます。
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ステップ4:改善策の実行 – 「機能」と「感情」にアプローチする

課題が見つかったら、具体的な改善策を実行します。一般的な導線改善やCTA最適化、コンテンツ追加に加え、候補者の「感情」に訴えかける改善も意識しましょう。
1. 機能的な改善(基本)
- 導線の改善: ナビゲーション、パンくずリスト、内部リンク、サイトマップの見直し。
- CTAの最適化: ボタンのデザイン、文言、配置の改善、A/Bテスト。
- コンテンツの追加・修正: FAQ、社員インタビュー、働き方紹介、企業文化コンテンツの充実・更新。
- 応募フォームの最適化(EFO): 入力項目削減、入力補助、エラー表示改善。Webマーケティング分野の調査によれば、フォームの項目数削減や入力補助機能だけで、フォーム完了率(CVR)が大幅に改善するケースも報告されています。
- スマートフォン対応の徹底: 表示崩れや操作性の問題を解消します。各種調査で求職者のスマホ利用率は過半数を超えており、スマホでの見やすさ・使いやすさは必須条件です。
2. 「共感」と「体験」を高める改善
- ストーリーテリングの強化
単なる事実紹介ではなく、企業の歴史、挑戦、社員の成長物語などを、感情に訴えるストーリーとして語る。特に失敗談やそれを乗り越えた話は共感を呼びやすい。 - エモーショナルなビジュアル活用
働く人の「本物の笑顔」、チームの一体感が伝わる写真、想いが伝わる動画などを効果的に使用する。一般的なWebマーケティング調査でも、動画はテキスト等に比べエンゲージメントを高める効果が期待できるとされています。 - 「本音」が見えるコンテンツ
社員の仕事以外の顔、社内でのちょっとした出来事、時には経営層の悩みなど、人間味あふれる情報を発信する(可能な範囲で)。 - インタラクティブな要素
オンライン質問会の実施・アーカイブ公開、キャリアシミュレーション、適職診断など、候補者が「参加」できるコンテンツを用意する。 - パーソナライズの試み(応用)
(技術的に可能であれば)訪問者の属性や閲覧履歴に応じて、おすすめのコンテンツを表示するなど、個別最適化された体験を提供する。
機能的な改善でストレスをなくし、感情的な改善でエンゲージメントを高める。この両輪でサイトを改善していくことが重要です。
ステップ5:集客力の強化 – 適切な人に、適切なタイミングで届ける

サイトを改善しても、見てもらえなければ意味がありません。集客施策も、ターゲットと候補者体験を意識して行いましょう。
- SEO
ターゲットが使うであろうキーワードを深く理解し、その検索意図に応える質の高いコンテンツを作成・最適化する。 - SNS連携・活用
各SNSの特性とターゲット層を理解し、プラットフォームに合った情報発信を行う。単なる告知だけでなく、候補者との対話やコミュニティ形成も意識する。 - Web広告
ターゲット層に効率的にリーチできる媒体を選定し、広告クリエイティブも採用サイトのメッセージと一貫性を持たせる。 - 他チャネルとの連携
説明会、イベント、リファラル採用など、他の採用活動と連携し、採用サイトが候補者体験全体のハブとなるように設計する。例えば、説明会参加者限定のコンテンツを用意するなど。
ステップ6:継続的な改善 – 「全員参加」でPDCAを回し続けよう

採用サイトの運用・改善は、終わりなき旅です。市場や候補者の変化に対応し、常に進化し続けるためには、継続的なPDCAサイクルが不可欠です。
【採用サイト改善のPDCAサイクル】
- Plan(計画): データと候補者の声に基づき課題を特定し、仮説を立て、改善策と目標(KPI+候補者体験)を設定する。
- Do(実行): 計画した改善策を実行する。小さな改善でも良いので、スピード感を持って試す。
- Check(評価): 効果をデータで測定し、候補者の反応(アンケートなど)も確認する。目標達成度と仮説の正誤を検証する。
- Action(改善): 検証結果に基づき、更なる改善策を検討・実施する。成功事例は共有し、失敗からも学びを得て次に活かす。
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「改善チーム」で社内を巻き込む
このPDCAサイクルを効果的に回すためには、採用担当者だけでなく、多様なメンバーを巻き込むことが非常に重要です。
- 巻き込むべきメンバー(例): マーケティング担当、デザイナー/エンジニア、広報担当、現場社員、経営層など。
- 連携方法: 定期的なミーティング、役割分担、目標や成果の共有。
採用サイトは、人事部だけのものではありません。会社の「顔」であり、未来の仲間を迎え入れるための「玄関」です。 全社でその重要性を認識し、協力して改善に取り組む文化を醸成することが、他社には真似できない強力な採用サイトを作り上げる秘訣です。
「実験文化」と「学び続ける姿勢」
最初から完璧な改善策はありません。失敗を恐れずに新しい施策を試し、その結果から学び、素早く次のアクションに移る「実験文化」が、サイトを進化させます。
- A/Bテストなどを積極的に活用し、データに基づいた意思決定を行う。
- うまくいかなかった施策も「学び」として捉え、原因を分析し次に活かす。
- 常に最新の採用トレンドや技術動向にアンテナを張り、学び続ける姿勢を持つ。
まとめ:採用サイトは「育てる」もの。データと共感、そしてチームで進化させよう
採用サイトの運用・改善は、単なるウェブサイト管理ではありません。それは、未来の仲間とのより良い出会いを創出するための、継続的な対話と改善のプロセスです。
データ分析による客観的な視点に加え、
- 候補者の「体験」と「感情」に寄り添い、
- 数値化できない「声」にも耳を傾け、
- 社内の多様なメンバーを巻き込み、
- 失敗から学びながら、実験を繰り返すこと。
これらの視点を持つことで、あなたの会社の採用サイトは、ありきたりな情報サイトから脱却し、他社にはない独自の魅力を放ち、本当に求める人材の心を掴む「生きた」プラットフォームへと進化していくはずです。
すぐに大きな成果が出なくても、焦る必要はありません。大切なのは、候補者と真摯に向き合い、チームで協力し、地道に改善を続けていくことです。そのプロセス自体が、企業の成長にも繋がるでしょう。
データと共感、そしてチームの力で、あなたの採用サイトを、未来への素晴らしい扉に育てていきましょう。