【マーケティング用語集】プロダクトアウトとは?作り手の想いを形にする開発手法を徹底解説

【マーケティング用語集】プロダクトアウトとは?作り手の想いを形にする開発手法を徹底解説 📚 用語集

プロダクトアウトとは?

マーケットイン プロダクトアウト
引用:https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/market-in/

プロダクトアウト(Product-out)とは、マーケティングや商品開発における基本的な考え方の一つです。

企業が持つ技術力、アイデア、生産設備、あるいは「作りたいもの」を起点として商品やサービスを開発し、それを市場に提供していく手法を指します。「自社の強み(プロダクト)から発想する」という思想に基づき、まず企業が良いと考えるもの、作れるものを作り、その後に市場に提案していくアプローチです。

簡単に言えば、「良いものを作れば売れるはず」という考え方に基づいています。

マーケットインとの違い

プロダクトアウトと対比される概念としてマーケットイン(Market-in)があります。

  • プロダクトアウト: 企業が良いと考えるもの、自社の技術力やアイデアを起点に商品・サービスを開発し、市場に提供する。(企業視点・作り手視点)
  • マーケットイン: 顧客のニーズや課題を起点に、商品・サービスを開発・提供する。(顧客視点)

マーケットインは「顧客が欲しいものを作る」考え方であるのに対し、プロダクトアウトは「企業が作りたいもの、作れるものを作る」考え方と言えます。

プロダクトアウトのメリット(利点)

プロダクトアウトの考え方には、以下のようなメリットがあります。

  1. 革新的な製品・サービスの創出: 既存の市場ニーズにとらわれないため、世の中にまだない画期的な製品や、全く新しい価値を生み出す可能性があります。これは、時に市場の常識を覆すようなイノベーションにつながります。
    こうした破壊的な変化の重要性や、なぜ大企業がそれに対応しにくいのかについては、経営学者クレイトン・クリステンセンが提唱した『イノベーションのジレンマ』でも詳しく論じられており、プロダクトアウトがまさにその源泉となり得ることを示唆しています。
  2. 技術的優位性の活用: 自社が持つ独自の高い技術力やノウハウを最大限に活かした製品開発が可能です。他社には真似できない競争優位性を築きやすくなります。
  3. 潜在ニーズの喚起: 顧客自身も気づいていないような潜在的なニーズを掘り起こし、新たな市場を創造できる可能性があります。「これがないと不便だとは思っていなかったが、使ってみたら手放せない」といった製品は、プロダクトアウト的な発想から生まれることがあります。
  4. 企業のビジョンや哲学の反映: 作り手の強い想い、こだわり、独自の美学などを製品に込めやすく、企業のブランドイメージを強く打ち出すことができます。
  5. 開発効率の向上(場合による): 市場調査に多大な時間をかけることなく、自社の計画や技術シーズに基づいてスピーディーに開発を進められる場合があります。

プロダクトアウトのデメリット(注意点)

一方で、プロダクトアウトには以下のようなリスクや注意点も存在します。

  1. 市場ニーズとの乖離リスク
    最大のデメリットは、企業の「良いもの」が必ずしも顧客の「欲しいもの」とは限らず、市場に受け入れられずに売れないリスクがあることです。
  2. 独りよがりな開発
    作り手の思い込みが強すぎると、機能過多になったり、使い勝手が悪かったりと、顧客不在の自己満足的な製品になってしまう可能性があります。
  3. マーケティングコストの増大
    製品の良さや必要性を市場に理解してもらうための説明やプロモーション活動に、多くの時間とコストがかかる場合があります。
  4. 在庫リスク
    市場の需要を読み違えると、過剰な在庫を抱えてしまうリスクがあります。

プロダクトアウトが有効なケース

プロダクトアウト的なアプローチは、以下のような場合に特に有効性を発揮します。

  • 画期的な技術シーズ(種)がある場合
    他社にはない革新的な技術を製品化したいとき。
  • 全く新しい市場を創造したい場合
    既存の市場やニーズにとらわれず、新しい価値提案を目指すとき。(例: 初期のスマートフォン、ウォークマンなど)
  • 企業のブランド力が非常に強い場合
    その企業の製品なら欲しい、という熱心なファンが多く存在する場合。(例: Apple製品の一部など)
  • アート作品や嗜好品など、作り手の個性や世界観が価値となる分野。

プロダクトアウトとマーケットインのバランス

かつてはプロダクトアウトが主流の時代もありましたが、市場が成熟し競争が激化する現代においては、プロダクトアウト一辺倒では成功が難しくなっています。かといって、マーケットインばかりを追求すると、革新性が失われ、競合との同質化を招く可能性もあります。

重要なのは、プロダクトアウトとマーケットインのどちらか一方を選ぶのではなく、両者の視点をバランス良く取り入れることです。例えば、プロダクトアウト的な発想で生まれた革新的なアイデアを、マーケットイン的な視点で市場のニーズと照らし合わせ、改良を加えていく、といったハイブリッドなアプローチが有効とされています。

まとめ

プロダクトアウトは、企業の持つ技術やアイデア、つまり「作り手の想い」を起点とする開発思想です。革新的な製品を生み出す原動力となる可能性がある一方で、市場ニーズから乖離してしまうリスクも伴います。

対となるマーケットインとの違いを理解し、それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、自社の状況や製品特性、市場環境に合わせて、両者のバランスを取りながらマーケティング戦略や製品開発を進めることが、現代のビジネスにおいては極めて重要です。

この記事のポイント

  • プロダクトアウトは企業・技術起点の考え方。
  • マーケットインは顧客ニーズ起点の考え方。
  • 革新的な製品を生み出す可能性がある点が最大のメリット。
  • 市場ニーズとのズレが生じやすい点がデメリット。
  • 現代ではマーケットインとのバランスを取ることが重要視されている。

この記事が、マーケティング初心者の方の「プロダクトアウト」理解の一助となれば幸いです。

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